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肩腱板「断裂」ともいいます 肩の動きは外側の筋と内側の筋により行われています。内側の筋群はインナーマッスルともよばれ、その正体は「腱板」と呼ばれる4つの筋腱(棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋)からなっています。(図1)これらは肩の前、上、後ろにあって、肩が様々な方向に運動するのに役立っています。横から腕を挙げる動作は三角筋などのアウターマッスルが上方へそして、腱板が内方へ収縮する事により、腕の骨が上がるわけです。
図2のように 腱板が切れてしまうと、腱板の上にある柔らかい部分(滑液包)が強い炎症をおこし腫れたり、充血したり、水がたまったりします。このためたとえ動かさなくても肩の痛みが起きてしまいます。この痛みは寝ている姿勢で強くなることがあります。 また、切れた部分が広がったり、切れたまま重労働や激しい運動を繰り返すと腱の破れた部分を通して骨どおしが図3のように衝突を起こし、骨の変形を起こす事もあります。 したがって損傷の程度をきちんと診断し、各患者さんの仕事や年令にあった治療方法を選ぶ事が大切になります。 腱板損傷はレントゲンにはうつらないために以前は「五十肩」として片付けられてしまっている場合も多かったと思われます。近年では診察方法の研究がすすみ、専門医による診察で多くは判定できます。さらにMRIなどの診断機器により損傷の部位や大きさを正確に判定できるようになってきました(図4)
【腱板損傷に対する治療法】 当院では腱板損傷に対して以下のような治療方法で対応しています 1.保存療法 手術を行わず、注射、投薬、リハビリ訓練などで疼痛の改善を図る方法です。 肉体労働やスポーツ活動があまり無い方、疼痛が薬などで抑えられる場合は、通院による方法で対処できます。 ただし、切れた部分は時間が経ってもふさがるわけではありません。 2.手術方法 保存療法での改善があまりみられない場合、手術方法を検討する事になります。 腱板損傷の診断がはっきりした患者さんの中で手術に至る方は当院の場合、2〜3割の方です。 当院では以下の示す手術を年間約30〜40例行っています。 @ 一泊もしくは日帰りによる肩内視鏡手術 http://www.med.kurobe.toyama.jp/hospital/topics/gakujyutu/kata.htmを御覧下さい 局所麻酔で行える方法です。 切れた腱をつなぐ事は出来ませんが、腱の上にある滑液包の炎症を抑えたり、腱と靭帯の摩擦状態を治すことが出来ます。とくに夜間痛や「寝る姿勢が痛い」という方はこの方法で痛みが軽快することが多いです。腕の固定が要らず、仕事を休む必要がないので、AやBの方法を行う前にまず行ってみる,と希望される方も多いです。 この方法は、東京の奥津博士が透析患者さん向けに開発した方法を、当院で透析患者さん以外の肩の痛みに応用しその方法をまとめたもので、多くの医師がこれまで当院に手術研修に来られています。 《 この手術の当院での手術成績 2003年報告》 肩内視鏡手術を行って1年以上たった患者さん(透析患者さん以外の肩の痛み)59名を調査したところ、夜間痛・安静時痛は98%の方で消失していました。また手術前の痛みを100とした場合、手術後3ヶ月時点での痛みは平均29.8、1年後では12.3と大きく改善していました。59名の方のうち3名の方は以下のAかBの手術を追加施行しています ※ この手術方法の確立と成績の研究で第99回中部日本整形外科災害外科学会賞を授与されました A 腱板修復手術 完全に断裂した部分の修復は手術しかありません。しかし、70歳をこえている方や断裂後長期の時間が経っている場合には縫合が困難な場合もありますので事前の検査と充分な相談が必要です。 手術は腱板の切れた部分を直接縫合修復する方法で、全身麻酔で行います。多くは切れた部分を引っ張り、骨に掘った溝に引き込み縫合します。この手術では、腱板の切れ目が大きい場合、縫合のために鎖骨から三角筋を一旦はがす処置を行うことも一般的に行われていますが、当院では、腱板の切れ目が大きくても骨から筋をはがすことはしません。これにより痛みや筋力低下といった事を防ぐよう工夫しています。 手術後は約1か月の腕の固定が必要になります。また2〜5週の入院が必要になります。 《 腱板修復手術全体の当院での手術成績 2004年報告》 腱板修復手術を行って1年以上たった患者さん37名を調査したところ、夜間痛、挙上角度、日本整形外科学会肩点数は全ての患者さんで改善していました。夜間痛は術前22名の方が毎日の疼痛、13名の方が1〜2日おきの疼痛に悩んでいましたが、術後は夜間痛が残っている方はいませんでした。挙上角度は平均138度が158度に改善し、肩点数は平均63点が90点に改善していました。また、手術後1年でMR検査した結果、93%の患者さんで良好に修復した腱板が維持されていました。一部の非薄化、小さな再断裂部分が見られたのは2例(8%)の方でいずれも手術時、5センチ以上の大きな欠損を示していた方でした。 さらに、以下のような新しい手法、独自の手法をとりいれ、修復の成績向上をはかっています (1)関節鏡による腱板修復手術法 骨を削ったり腱を修復したりする全ての処置を関節鏡にて行う方法です。断裂部分が大きくないもの、切れ た断端があまり薄くないものではこの方法で行っています。表面の傷が小さくてすみ、手術後の疼痛が少な く筋力低下も少ない利点があります。関節鏡で修復を行っても固定性が強くない場合には一部皮膚を切開 して修復を追加する場合がありますがこの場合でも傷は小さくてすみます。
(2)自家大腿筋膜移植による腱板再建手術法 4本ある腱板のうち複数切れていたり、切れ目が大きく広まってしまっており、切れた部分を引っ張っても修 復出来ない患者さんの例はさほど多いものではありません。このような場合、これまでは修復をあきらめ滑膜 の切除や骨の凹凸変性部分のみを処置することも行われていました。 しかし、当院では大腿部の筋膜を利用した腱板再建手術により大きな欠損がある場合でも修復を行っています。これにより肩機能の確実な再建をめざしています。 当院の再建方法では縫合法を標準化し、より強固な固定を行う事、リハビリプログラムを個別性に合わせた段階式に組む事で良好な成績を発表しています。(関節外科 23巻10号 2004年 メジカルビュー社) ![]() 図7
広範囲断裂のこれまでの治療調査報告では修復の維持が40〜60%とされていますので、当院で行ってい るこの腱板再建方法はより良好な成績といえるでしょう。 |